慢性肝炎の「発症」とはどの時点のこと?
B型肝炎給付金制度においては,
発症から20年以内の慢性肝炎の場合は,1250万円,
発症から20年以上経過している場合は,
1)現に治療を受けている方等は300万円
2)1)に該当しない方は150万円
と定められています。
20年以上たったらどうして金額がこんなに減るのか,そもそも理不尽なのですが,除斥期間という法律の規定上,「そもそも請求権が消滅している」にもかかわらず,「それでは納得しがたいでしょうから少額払います」ということで決められた金額です。除斥期間についての法律解説はここでは詳しく触れませんが,「発症」とはどの時点から言うのか,ご質問をよく受けるので,解説します。
まず,B型肝炎に感染していることを指摘された時点を「発症」というのではありません。もちろん,「肝機能の異常を指摘され,医療機関を受診したところ,B型肝炎ウイルスに感染していることを知らせれた」というのはよくある例ですので,この場合は,「感染していることを指摘された時点」=「発症」ということになりますが,感染していることを指摘されたきっかけは様々であり,感染していることを指摘されたとしても,「発症」しているとは限らないので,「感染をしていることを指摘された時点」=「発症」ではありません。
20年以上前に,健診でHBV指摘され,医療機関でフォローを受けるようになったが,肝機能の異常を指摘されるようになったのは10年ほど前からということであれば,発症から20年たっていませんので,請求額は1250万円となります。
「発症」とは,B型肝炎ウイルスが原因で肝機能のALT(GPT)の異常値が6か月以上の間隔を置いた2時点で連続して認められる場合をいいます。一旦,異常値があっても,半年以内に正常値があると,原則として,発症とは認められません。
また,上記数値が半年以上連続して高かったとしても,脂肪肝,アルコールの影響,薬剤の影響などがうかがえる場合にも,発症とは断定できません。
従いまして,20年以上前に「発症」しているといわれて金額が下がるかどうかは,過去の医療記録や検査記録などを精査して,提出する書類をよく見極めていく必要があります。
なお,1)現に治療を受けている方等は300万円 というのは,現在治療を受けておられなくも,過去にインターフェロン製剤,核酸アナログ製剤,ステロイドリバウンド療法またはプロパゲルマニウムのいずれかの治療歴がカルテなどから認められる場合にも適用されます。必ずしも,当該治療をした当時の医療記録が残っていなくても300万円が認められた事例が多数あります。(弁護士 澤田有紀)